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「わかんない!」
モミジはボールをブロイに投げつけた。ボールは下に置かれた兜に弾かれて高く上がり、キャッチし損ねたブロイの首にはまり込んだ。走って城に戻るモミジを追うのが先か、泣きわめいて止まらないエイミをなだめるのが先か。ボール頭の彼の気苦労は絶えない。
モミジは廊下を走りながら、何かに追われる気持ちでいた。やってはいけないことをした、とはっきり自覚した。けれど、今更どうすればいいのかわからない。
部屋に飛び込んで鍵を閉める。クローゼットの前に立ち、少し考えた。この中には自分の罪がある。子供なので、罪という言葉はわかっていないが、それに近い気持ちが確実にあった。
意を決してクローゼットを開けると、ヘタレたクッションは朝のまま、そこにヘタレていた。中を確認する勇気はなかった。これをばれずに返すにはどうすればいいのか。彼女には難しすぎる問題だった。
この部屋はブロイがちゃんと探したうえで、なかったことになっているので、今更ベッドに置いておくこともできない。不自然すぎるからだ。どうやったら、何もなかったようにごまかせるか、彼女の頭はそれでいっぱいだった。
上等な解決策を見いだせないうちに、クッションの中身がひどく汚いものに思えてきた。これがなければ、そのうち、エイミは本当に忘れてしまって、もしかしたら前のように戻るかもしれない。
モミジはピンク色のリュックサックにクッションを詰め込むと、廊下へ飛び出した。
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