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彼女は うーんと穏やかに首を傾げ 切なそうに笑った。 「好きって事になっちゃうなぁ。 晴れてる日は大体 来ちゃうもの」 そして『ちょっと変よね』と笑った。 「そんな事ないですよ。 ここ、綺麗ですし」 本当に綺麗だと思う。 彼女を含めたこの景色は。 翔悟は何も言われずとも腰を下ろしてみた。 すると彼女も翔悟と目線を合わすように しゃがんだ。 このどこまでも白い肌は太陽の光を 反射しているようだった。 「あなた学生さん?」 その聞き方で彼女は学生でないことがわかった。 翔悟が頷くと『いいわね』と目尻を下げる。 「でも早く卒業しちゃいたいですよ」 最近、本当にそう思う。 今行ってる大学は確かに翔悟の第一志望校だ。 でも行ったら行ったで特に目の輝くほどでもなく、 別にどこでも良かったのではないかと 思ってしまうのだ。 すると彼女は懐かしむように微笑んだ。 「当時の私と同じ事言ってる。 意味はきっと違うけど」 今日、初めて喋ったというのに 昔から知っている仲のように彼女は 翔悟に接した。 意味は違うと言われた事が気になり 彼女の水晶玉のような瞳に視線をやると それを察したのか 彼女は口角をきゅっと少女らしく上げた。
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