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「あなた聞き上手だってよく言われない?」 「そう...っすか?」 「そうよ。 あなたの目がね私を喋らせようとするの」 ごめんなさい変な事言って、と微笑んでから 彼女は胸に当てた右手を(いた)わるようにして体勢を横座りに変える。 そしてリップクリームだけの 自然的な雰囲気を(まと)った唇がまた開いた。 「私ね大学卒業したら結婚が決まっていたの」 それを聞き翔悟はさりげなく左手に 視線を滑らせた。 翔悟の視線に気づいた彼女は続けて 「してないよ?」 と舌を小さく出しまっさらな左手を グーパーさせた。 その仕草に少しでも動揺してしまったのは 翔悟の心だけが知っている。
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