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「ねぇ?」
翔悟の名前を知らない彼女が呼ぶ。
振り向くと 潤いに満ちた瞳が翔悟を覗いていた。
それに翔悟は
年上の女性が弟を見る眼差しと
似たようなものを感じ、
少しやるせない気持ちになった。
「あなたがまたここに来て、
その時もし私が隠れていたら見つけられる?」
翔悟は困ってしまった。
即答で見つけられると答えたら
子供っぽく見られてしまうと思ったからだ。
言葉を考えた末、翔悟は口を開いた。
「見つけられますよ。
あなたが見つけて欲しいと思う限り
僕は見つけられると思います」
小っ恥ずかしさが頭を回り、
最後の方は声が小さくなりそうだったが
彼女にはしっかりと聞こえたようだった。
「今の大学生ってこんなませた言葉を言うのね」
そう言う彼女はとても嬉しそうにしていた。
ふふっと笑う姿は
芝生を撫でる柔らかな風によく似ている。
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