3/4

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
再び風を感じながら走る続けると 左手に大きな川が見えた。 さっきまで大通りを走っていたのに 気づけばサイクリングロードに変わっている。 細いアスファルトの両端は緑の丘。 所々に石の階段があり川の近くまで 下りることが出来るようになっている。 翔悟はバイクを漕ぎながら 誰もいない川の景色を見下ろした。 サイクリングロードは走りやすくていいが 若干 同じような景色に飽きてしまう。 翔悟は前方へ向き直し、 少し遠くへと視野を広げてみる。 すると遠くの下の方、川の水に近い所で しゃがんでいる女性に目がいった。 セミロングで明るめな色の髪。 服装は座っていてよく見えないが 白っぽいワンピースのような気がする。 彼女は川の方を向いているため 上を走る翔悟から見て 顔の表情までを確認することは出来なかった。 翔悟の乗っているクロスバイクは速く、 彼女と高さの距離は変わらないものの 直線の距離はすぐに縮まり、そして通り過ぎるのもあっという間だった。 ただそれだけの一瞬に近い瞬間だったのに とても美しかった。 青い空と丘の緑、流れる川のせいか その姿はシャボン玉のように爽やかで透き通って見えた。 太陽の光を受け取った髪は輝いていた。 通り過ぎた後、一度だけ翔悟は振り返った。 どんどん彼女の姿は小さくなっていく。 やがて見えなくなり また前方を向き直すとさっきと変わらない 景色に戻る。 なのに翔悟の頭はまだ あの爽やかで透き通っていた姿を忘れられなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加