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昨日もそうだったが
彼女は右手を胸に当てているようだった。
荷物も何も持っておらず
自然に任せている左手は指まで綺麗に
整っている。
あの場所で何をしているのだろうか。
昨日初めてここを通ったから分からないが
毎日 彼女はいるのだろうか。
でもそう思ったところで
話したこともないのに聞けるわけがない。
そんな事を心の中でぼやいていると
涼しくない風がびゅうっと通った。
「わっ...」
翔悟はクロスバイクに置く手を強く握る。
同時に彼女の方を見ると
つばの大きな麦わら帽子が風に乗っていた。
露になった頭部を左手で押さえ
彼女は振り向くも
麦わら帽子は結構遠くまで行ってしまっている。
瞬時に翔悟の体は動き出していた。
クロスバイクを置き去りにし、
石の階段を軽やかに下りる。
さっと麦わら帽子を拾い上げ顔を上げると
初めて見る黒目がちの瞳と視線が繋がった。
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