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正論すぎてなにも言えなかった。先生と生徒が恋愛できるのはマンガの中だけだ。現実の世界では受け入れられないのは分かっている。けれど、私は懲りなかった。
「でも、もう生徒じゃなくなったから」
華は今日、卒業した。だから…
「先生、私を彼女にしてください」
「華ちゃんんっっ!!」
「きゃあ!」
華の返事に、思わず真先生は華を抱きしめる。
「ああよかった!」
「先生、くすぐったいよ」
先生の短い黒髪が華の首筋をくすぐる。
「でも、本当に嬉しいな 途中でダメかも…って何回か考えちゃったからな~」
真先生は安心しきって幸せそうに笑う。こんな笑顔、今まで見たことがなかった。華の心臓はドクンとまた高鳴っていく。
「華ちゃん、好きだよ 今まで何回も言ってくれたのに応えられなくてごめんね 大好きだよ」
真先生は華を抱きしめ、何度も好きだという。まるで「好き」という言葉が堰を切って溢れてくるようだった。
「先生、そんなに言ったら…は、恥ずかしい」
「恥ずかしいって、華ちゃんはもっと言ってくれたよ」
先生はそれが当たり前のように言う。
華は毎日のように言っていたのだから、先生はどれだけ恥ずかしい思いをしていたのか…
(告白ってするよりもされる方が恥ずかしい!)
自分から告白しているときにこれほどの羞恥心を感じたことがなかった。赤くなった顔をこれ以上見られたくなくて、華は両手で顔を覆う。
すると、自分の身体を抱きしめる先生の体温や力強さがダイレクトに伝わってくる。
「はぁ…カワイイ」
ちゅっ
柔らかな感触と聞こえたリップ音に驚き、目を見開く。
真先生が華の小さな唇にキスをしたのだ。
両手で顔を覆ってしまった華だったが、目や頬を隠していて、小さな唇は隠されていなかった。なにが起こったのか理解が追いつかない。
「せ、…せん…、い、いま、」
「華ちゃんも顔真っ赤」
華の手首は先生の大きな手によって捕らわれ、表情を隠すことができない。
「華ちゃん、もしかしてファーストキスだった?」
コクコクと華は首を振る。
「ご、ごめんな こんなところでムードもなんにもなかったよな…」
先生は少しだけしょぼんとした表情をする。
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