老婆

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 私がその老婆を見かけたのは偶然でした。  夜の八時頃だったでしょうか。  ゴミ袋を出そうと家からやや離れたゴミ集積場に行った時です。  ゴミは、朝の七時から八時の間に出すルールでしたが、そのゴミ集積場だけ暗黙の了解で夜の間に出しても誰も何も言わないのでした。今週のゴミの日は、祝日です。朝、ゆっくり寝ていたい私は、ずるして夜に出すことにしたのでした。  ゴミを出し帰ろうとした私でしたが、ゴミ集積場の前に広がる駐車場の奥で老婆がうずくまっているのに気づきました。大変です。ひょっとして病気かなにかで動けないのでは……。そう思った私は、慌てて老婆の方へ駆け寄りました。ところが、近づいてわかったのは、老婆の周りには、たくさんの野良猫がおり、老婆は、猫たちに餌をやっているようなのでした。  私は、野良猫が苦手です。というか、動物全般があまり好きではありません。チッ、心配して損したわ……と、私は、家に帰ったのでした。  翌日、用があり昨夜老婆がいた駐車場の方へ私は行きました。これまで気にしたことはなかったのですが、よく見れば、駐車場のあちこちに野良猫が寝そべったり毛づくろいをしているではありませんか。あの老婆のせいだなと私は思いました。保健所に連絡するべきか私は考えましたが、ここは、うちから少し離れた所です。うちの方になにか害があるわけではありません。しばらくして、普段そこをあまり通らない私は、老婆のことも猫のことも忘れてしまいました。
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