宝物

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 「よし、それじゃあ時間も遅くなっちゃったから、今日はここまで。寄り道せずに、早く帰りなさい」  「はい、藤木先生さようなら」  アキラは立ち上がり、おじぎをして教室から出ていく。  先生はアキラが出ていくのを見届けるや、小さく息を吐いた。  男子が女子と仲良くするのを避けることは、この歳の子供にはよくあることだ。  虫が好きな女の子は少ないが、いない訳ではない。  魔法の宝物を失った少女はこれからどうするのだろう。  考えることは山程ある。  「あ、虫かご」  ふと机の上を見ると、アキラのフタの外れた虫かごが置かれたままになっていた。  「また明日、かな」  虫かごの上、あるべき位置にフタが戻される。  宝物を逃がそうとも、友達までも逃がしてしまわないようにと。
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