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暑熱の夏
私は彼女に触れるのが好きだ。触れる刹那に感じる心地よい冷たさは彼女特有のもので、それを条件反射のよう覚えてしまった私の身体は触れるだけで熱くなってしまう。
もっと彼女に触れたい。そう思ってしまうが彼女はそれを許さない。彼女はある一定の距離からは逃げるように立ち去るのだ。だから私は嫌われているとさえ思っていた。
「なのになんで触らせるんだろう…」
うだるような熱さに白旗を上げていると彼女は声をかけた。つらそうだね。と。
「貴方は何故平気なの?」
彼女は平気そうでますます不思議だ。それは…。そう言って私の顔を覗き込み暗所を作ってくれる。普段と見る顔が上下逆で逆立ちをしているような感覚に陥る。長くサラサラとした髪が汗ばむ私の首や胸に張り付き、なんとも言えない気持ちになる。彼女の顔は、普段の何倍も近くその距離に息を呑んだ。答えを促すが答えはなく、代わりに微笑んでいるだけだ。
「貴方の事を教えて?」
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