白い手

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白い手

 私は浜歩きを趣味にしていた。  休日には車を運転して浜に出かけ、半日ほど歩いたり寝そべったりして過ごす。人が少ない、お気に入りの浜がある。けれど今日は、違う浜へ行ってみようと思い立った。  海岸沿いに車を走らせながら、のんびりできそうな場所を探した。  行く手に松原が見えた。松原というのは穴場なのだ。松にさえぎられて海が見渡せない分、来る人が少ない。  私は松原のわきに車を止めた。浜に降りると、思ったより広い砂浜があった。砂は白くて波も穏やかだが、人影はない。あたりだ。  私は波打ち際まで歩いて行った。海藻や貝殻が落ちている。波が泡を吹いて打ち寄せては、沖へ返していく。そよそよと風が吹いてきて、私の髪をなでていった。  私はとても満たされた気持ちになった。この気持ちを書きとめようと、ズボンのポケットから手帳を取り出し、ポロシャツの胸ポケットからペンをとった。  波打ち際から少し離れて、文面を考える。 「潮風が私の中を通り過ぎていく、初春の浜辺」  よし、これがいい。わたしはその場に座って手帳に書きつけた。ペンを胸ポケットに戻す。潮風でなく、海を渡ってきた風にした方がいいだろうか。手帳を見ながら考えた。     
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