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「……『道連れだ』」
ぎゃああああ! とみんなが一斉に声を上げた。聞こえたんだ。姿が見えないみんなにも、この声は聞こえたんだ!
僕たちは弾かれるようにして走り出す。僕は雄一の腕をがっちりと掴む。宏樹とふたりで雄一を引っ張って引っ張って、それから雄一の家のインターホンを連打して……。
「まっ、ま、まあ! みんな、どうしたの!? ああ、雄一! 雄一大丈夫!? みんな早く入って! お父さん、来て……!」
みんなががたがたと震えて、とてもじゃないけど家には帰れなかった。雄一のお母さんが家に電話してくれて、それぞれの親が迎えに来て、僕たちはどうにかその夜、家に帰る事ができた。
結局、暗やみ公園に本当にお化けはいた。僕たちは翌日の学校で、素直に宏樹に謝った。バカにして悪かった、宏樹の言う事は本当だったんだね……。
けれど宏樹は偉ぶる事もなく、僕たちに逆に謝る。こういう所が宏樹の良い所なんだ。頭を下げて、ちゃんと僕たちの顔を見回して。
「俺こそごめん。変な事に巻き込んで。意地になって、みんなに迷惑をかけた。あの合言葉はもう忘れて。兄ちゃんには伝えたけど、俺たちはもうやめよう。あんな思いはたくさんだ」
雄一は頷く。少し顔が赤い雄一。きっと熱がある。でも休むとびびっていると思われるのが嫌だったんだろう。そして、疑問を口にする。
「……あれ、文章が繋がってるな。『痛いから』……『道連れだ』。次は何だ? その前は何だったんだ。気になる。気になるけど……もう、関わらない方がいいな」
みんなが頷いて、もう暗やみ公園には近寄らないと誓う。あんな思いは……もうたくさんだ。
なのに翌日雄一は学校を休んだ。次の日も次の日も休んだ。家に行っても、おばさんはなぜか会わせてくれなくて。
そして1ヶ月後、雄一の一家は遠くの街へ引っ越していった。
雄一は、あの合言葉をどこまで聞いたんだろう……。
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