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魔王様の魔力は、人から人へ、じわりじわりと<感染>します。
たとえば、地上に帰した勇者から、ほかの人間どもへ。
<感染>した者は、あらゆる意欲を奪われます。怠惰という名の、抗いがたい甘い毒。
すべての人間が<感染>し、闘う力も抵抗する気力も失う――その時を待ち、侵略をはじめれば良いのです。
悪の中の悪。
堕落の中の堕落――惰眠の魔王。
さすがは我が君、すばらしきお力でございます。
全ての処理を済ませたわたくしは、玉座でこっくり船をこぐ魔王さまを抱きあげ、寝台へとお運びします。
「うにゅう……ギリアムぅ……」
わたくしに頬をすり寄せる魔王さまは、大変に愛らしゅうございます。
今度のパジャマは、フリルのついたものがよろしいでしょうか。
どうぶつ着ぐるみパジャマという手もあります。ウサギさん、ネコさん、ヒツジさんなど、よくお似合いになりましょう。
明日のおやつは何にいたしましょう。本日のプリンはことのほかお気に入りのご様子で、わたくしは嬉しゅうございました……
おや。
わたくしも<感染>してしまったのでしょうか。
魔王さまの寝顔を見ていると、人間を滅亡させることなど『どーでもよく』なってくるのです。
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