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「どうしたんだ?ジュディ」
デイビッドが彼女の肩に触れると彼女の体はビクリとした。
ジュディスは目の前にいるデイビッドはあの暴力的な悪魔のような男ではないと自分に言い聞かせた。
彼女はゆっくりと起き上がると彼の腕を掴み「..ううん、何でもない..」とデイビッドの瞳を見つめた。
その証拠に彼の瞳は昔のような禍々しさは無く、青く澄んでいた。
ジュディスはホッとしたのか、デイビッドを優しく抱き締めた..デイビッドも彼女を自分の胸に抱き寄せると額にキスをした。
「悪い夢でも見たんだな」と小さく耳元で囁くと、ジュディスは頷き更にギュッと強く彼を抱き締めた..
そう、悪い夢を見たのだ..デイビッドはもうあの頃の彼ではないのだ。
デイビッドはナイトテーブルのスタンドの明かりを消すと二人は再び横になり、今度は悪い妄想に取り憑かれる事なくジュディスは彼の胸の中で眠った。
ーーー
次の日は昨日の雷雨が嘘のように、空は雲一つなく晴天で陽射しが燦々と照り付け、夏の暑さも戻っていた。
ジュディスは休み時間にメールでウィリアムを呼び出し、二人は大学の中庭で落ち合った。
大きな木で日陰になっているベンチに座ると、ジュディスは昨日の事を謝った。
「構わないさ、それより君は雷が苦手なんだね」
「ええ..小さい頃に目の前の木に雷が落ちて、それから雷がすごく怖くなったの」
「そうか、それはとても辛いだろうね..これからも帰れない時は出来る限り送ってあげるよ」
その言葉にジュディスは小さく微笑んでから、少し眉を顰めた。
「..デイビッドが私達の事を疑ってるの..なんとか誤魔化せたけど昨日みたいな日は私を迎えに来るか駄目ならタクシーで帰って来いって」
「..そうか、一人で辛い目に遭わせてすまない。これからはもっと気を付けて交際しないといけないね」
ウィリアムは神妙な面持ちで彼女を見つめ、周りに人が居ないことを確認すると彼女の手を優しく握った。
「どんな事があっても愛してるよ、ジュディ」
「私もよ。心の底から愛してる...」
彼女もギュッとその手を強く握り返した。
__それから暫くは波風も立たず、穏やかな日々が続いた。
元々金曜のPF会の後も帰りは送って貰っていたが、あの一件があって以来は土日の泊まりの送り迎えも含め全て、家から少し離れた場所に変更した。
またいつ見られているか分からないからだ...
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