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二人は深くキスを交わし、喜びを分かち合った。
「私が看護師になってちゃんと独り立ち出来るまで待っててくれる..?」
「ああ、勿論。..それに君の両親の事もあるからね」
ジュディスは小さく頷いた。
やはり自分にはウィリアムしかいないとこの時、心から感じたのだ..デイビッドとの関係はどう考えてもおかしいのは明白で暴力で支配され抵抗出来ずにいたのなら仕方のない事だったが、自分から彼を受け入れているのはウィリアムや母親のケイティを裏切る行為だった。
デイビッドを愛してもそこに未来はなかった...
彼女は彼の見せた優しさと過去の同情から感覚が麻痺していたのだと改めて気付かされた。
この間のデイビッドが見せたウィリアムを見る瞳が、あの頃のジュディスを怯えさせていた彼の瞳そのものだった...
いつまでもこんな関係を続けていてはいけないとジュディスはデイビッドとの決別を心に誓った。
ーーー
日曜日の夕方、ジュディスは自宅から少し離れた場所まで送ってもらい、ウィリアムと別れた。
自宅へ帰るとリビングからテレビの音が聞こえていた。
ジュディスがリビングへ行くとそこにはソファーで寛ぎながらMLBの野球中継を観ているデイビッドが居た。
「ジュディ、おかえり」
デイビッドは彼女に気付くとテレビのボリュームを下げた。
「..ただいま」
「どうしたんだ?元気ないみたいだな」
デイビッドは訝しげに彼女を見た。
「..パパ、私もう続けられない」
彼女の口からポツリと言葉が出た...
デイビッドにははじめ何の事だか分からなかったが、直ぐにピンときたようだった。
手に持っていたドリンクのグラスを勢いよくテーブルに置くとジュディスの元へやって来た。
「帰って来た早々、何を言うんだ..パパがどれだけお前を愛しているか分かっているだろ?お前だってパパの事を..」
「こんな事いつまでも続けていける訳ないわ!私達はママを裏切ってるのよ」
ジュディスは声を荒げた。
「続けていけるさ、確かにケイティを裏切っている事は確かだが今更どうにもなる事じゃない」
彼女とは対照的にデイビッドは落ち着いていた。
「..お願い..パパ、私を自由にして...」
ジュディスの瞳からは涙が溢れ出し、崩れ落ちるように床に座り込んだ。
デイビッドは宥めようと自分も座り、彼女を抱き締めた...
その時彼には全てが分かったのだ、点と線が繋がった___
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