ダイアリー〈6〉

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それはどこか以前に嗅いだ事のある香りだった。 男性用の香水...デイビッドの脳裏にあの大学教授の顔が浮かんだ。 「分かった、だから落ち着くんだ。さぁ立って..」 デイビッドはジュディスを立たせ、「少し部屋で休みなさい」と項垂(うなだ)れている彼女を掴まえ二階の寝室まで寄り添うように歩いた。 ジュディスをベッドに座らせると、デイビッドはケイティのドレッサーの丸椅子に彼女と対面するように座った。 「どんな気分だ?ジュディ..二人の男のモノを交互に(たの)しむのは」 「..何の事?」 彼女は訝しげに彼を見た。 「あのハリスっていう大学教授の事だよ」 「だからハリス先生はただの大学の先生よ!」 デイビッドは立ち上がると彼女の下顎を掴み、顔を近付けると「警察官はなぁ鼻が利くんだよ、もう騙されないからな」と、感情は抑えていたがそこにはあの悪魔のような目をしたデイビッドがいた... 彼女は恐怖を感じ小さく震えたが、彼を睨みつけた。 「..そうよ、私はハリス先生..ううん、ウィリアムと付き合ってるわ」 デイビッドは手を離すと、ニタリと不敵な笑みを浮かべ一人で声を出して笑っていた.. 「私達は真剣に交際してるわ!将来の約束も交わしたの」 笑っていたデイビッドはピタリと笑うのをやめ、再び丸椅子に腰を下ろした。 「愛しのウィリアムが聞いたら何て思うだろうか、その心から愛する女性は自分の父親と関係を持っているなんてな」 「..彼は知っているわ、私が父親から虐待を受けている事を..それでも愛してくれたの」 デイビッドはクックッと笑いを堪えたように顔に笑みを浮かべた.. 「それじゃあそんな父親を自分から求めてる事もウィリアムは知ってるのか?」 ジュディスの表情は固まり、返す言葉が無かった。 「ジュディ酷いじゃないか..パパにずっと嘘をついていたんだね。週末は毎週あの教授と愉しい事をしていたなんて」 デイビッドは急に悲しそうな表情をしたかと思えば、再び表情を戻し「これからはもっと愉しい事をしようか」と不敵な笑みを見せた。 「パパお願い!私には彼しかいないの..私から彼を奪わないで!!」 ジュディスの必死な懇願は彼の耳には届かなかった.. デイビッドは彼女の髪を掴むと首筋に顔を近付け匂いを嗅いだ。 その間ジュディスは目に涙を浮かべながら、恐怖と先の見えない絶望に体が震えた... 「証拠を残してはいけないんだよ」 彼が耳元で小さく囁いた。
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