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校内で唯一、ウィリアムとの接点がある物理の講義も彼女は後ろの方で聴いていた。
入学してからずっと一番前で授業を受け、ずっとウィリアムに憧れを持ち、そして彼と交際するようになった..二人の愛は永遠だと信じていた。
しかしそれは脆くも崩れてしまった...
離れていても彼が愛おしくて堪らなかった。
後ろの席にいてもウィリアムは時折彼女に視線を向ける事があり、彼のその瞳は何かを訴えているようだった。
彼はジュディスを心から愛し、そして彼女もウィリアムを心から愛している..二人は将来を誓ったがウィリアムを守る為にジュディスは自ら身を引いたのだ。
これ以上ウィリアムに関わってはいけないと、彼女は自分に言い聞かせている。
それがお互いの為だからである。
授業が終わり、彼女は鞄に筆記用具を入れると足早に講義室を後にした。
廊下を歩いているとケイトが待っていたかのようにジュディスに微笑み掛けた。
「ケイト先生..!」
「ねぇ、ちょっとカフェテリアでお茶でもしない?」と茶目っ気のある表情で彼女を誘った。
***
二人はカフェテリアへ移動すると自販機で紙コップのドリンクを買い、適当に空いてる席に座った。
ケイトは白衣を着たままなので恐らく研究棟からそのまま抜け出して来たのだろう。
「ウィリアムと別れたのね」
「..!...ハリス先生から聞いたんですか?」
「風の噂よ」
そう言うとケイトは小さく微笑んだ。
「..まぁ、ウィリアムとは同僚であり友達だから。最近ちょっと元気無いから聞いてみたの、貴女が同じ時期にPF会を暫く休むって言ってたし」
「それじゃあ分かってますよね..」
「ええ、..でもどうしても納得出来なくて。貴女が簡単に別れを切り出す筈が無いわ..何か他に理由があるの?」
ジュディスは口を噤んだまま、ケイトを見つめると口を開き「..いえ、ハリス先生に言った通りです」とキッパリと否定した。
ケイトはコーヒーを一口飲むと、ふぅと小さく息を吐いた。
「私はいつだって貴女の味方よ、ウィリアムもいつでも戻って来て欲しいって言ってたわ」
「ありがとうございます..でも私はもうハリス先生とは何の関係もありません」
ジュディスは自分のカップを見ながら伏し目がちに話した。
「分かったわ、でも気持ちの整理がついたらまたPF会には参加してね。貴女は大切なメンバーなんですもの」
ケイトは優しい笑みで彼女を見つめた。
ジュディスは涙を堪えながら、やっとの思いで小さく頷いた。
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