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デイビッドは彼女が彼を素直に受け入れると暴力を振るう事もなく優しかった。
彼女の心は複雑な気持ちだった..自分には恋人のウィリアムがいるのに逆らえないとはいえデイビッドを自分から受け入れてしまった。
ジュディスはサンタバーバラへ行った事を後悔し始めた..彼の生い立ちを知ってしまった事で彼に少なからず同情心を抱いてしまったからだ。
これだったら何も知らず憎しみだけを抱いていた方が気持ちが楽だったのかもしれないと..
しかしこの日々を終わらせるには彼に母親のレイチェルに会った事を話し、デイビッドの過去を知っていると話さなければいけなかった。
それで素直にやめてくれるのだろうか?
彼女はそんな事を自問自答していた。
この日はケイティが仕事で居なかったのでデリバリーで中華を注文し、デイビッドと二人で夕食をとった。
「..パパはママを愛していないの?」
「勿論愛しているさ、..でもパパはジュディも愛してる」
デイビッドはプラスチックのフォークでデリバリー用の四角い紙パックに入っている麺料理を食べながら答えた。
「でもこんな事ずっと続けられないわ」
「俺は続けてみせるさ」
ジュディスは眉を潜めて小さく溜め息を吐いた。
食事を済ませ、自室へ戻ったジュディスはベッドに横になるとスマホでウィリアムにメールを送った。
【今日は言えなかったわ、時間が必要みたい...】
暫くするとウィリアムから返信が来た。
【急ぐ事はないさ、君のタイミングで話すんだ。明日またいつものカフェテリアで話そう:)】
ジュディスはスマホを枕元に置くと暫く天井をボーっと眺めていた。
ウィリアムごめんなさい..私、初めてデイビッドで感じてしまったの..あんなに触れられるのも嫌だったのに..でも私は貴方を愛してるわ。
ジュディスは心でそう呟くと疲れていたのかそのまま眠ってしまった。
次の日、午前の講義の後の休み時間にカフェテリアのいつもの窓際のテーブルでウィリアムと落ち合った。
「これ、冷めない内に」
ウィリアムは自販機で購入した紙コップのコーヒーを彼女に渡した。
「ありがとう、ウィリアム」
ジュディスはコーヒーを受け取ると、一口啜った。
「メールで話した通り..まだ心の準備が」
「君のタイミングで話せばいいさ、..それより大丈夫かい?」
「..ええ、最近は何もされてないわ」
ジュディスは自分の表情が引きつっていないか心配だった。
「そうか、それなら良かった」
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