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「えっ?!誰誰?」
ジュディスは興味津々で少し身を乗り出して聞いたが、カールはニコリと笑うと少し勿体ぶるかのように間をおいた。
そしてまるで長い時間待たされたような感覚を覚えたが、実際には一分も満たない内にカールは答えた。
「心から尊敬してるんです..ケイト教授を」
ジュディスは驚いたが、何となく納得だった。
「ハッキングのお礼にデートして貰ったって..」
「それはあくまでも形式的な物で食事をご馳走になっただけなんです」
要するにカールの気持ちはケイトには伝わっていないようだ。
「ちょっとでもケイト教授に興味を持ってもらいたくて思い切ってイメチェンしてみたんです」
彼は照れながら小さく頭を掻いた。
「好きなら思い切って告白するべきよ、ケイト先生フリーだから何も問題ないし」
「僕決めたんです、もういつでも卒業出来るのでケイト教授からずっと誘われていた研究職に就こうかと..」
「カール、大学卒業しちゃうの?」
「卒業しても次は隣の研究棟で仕事してるからいつでも会えるしPF会にも出られますよ」
カールは優しく微笑んだ。
「今は生徒ですが、卒業してケイト教授に認められる立派な研究者になって、そして気持ちを伝えたいです」
「..でもその間にケイト先生に恋人が出来たら?」
ジュディスは不安気な顔をしながら聞いた。
「その時はその時です、僕は彼女の傍に居られれば幸せです」
「そんなの間違ってる..イメチェンしたのだってケイト先生に振り向いて貰いたいから頑張ったんだよね。..この間のハッキングのお礼するわ!」
カールは豆鉄砲を食らったような顔をしながら彼女を見た。
「ケイト先生にそれとなく貴方の事をどう思ってるか聞いてみるわ。私がサポートするからそんなに先延ばしにしちゃダメだよ」
ジュディスの一生懸命さが伝わったのかカールはアハハと小さく声を出して笑った。
「君の熱心さには負けました」
彼は折れたのか、ジュディスの提案を飲んでくれた。
ランチを終えカフェテリアを後にした二人はお互い次の授業の講義室へ行く為、別れた。
別れる前にカールが「でも驚きました。君は太陽のように明るい子なんだなって」とふふっと笑った。
彼女は元々は活発で元気な女の子なのだ。
あの一件で心を閉ざしてしまったが、今は自分なりに充実した日々を送っている。
ジュディスは小さくはにかむとそれじゃあねと手を小さく挙げ、その場を後にした。
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