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ーーーその日の夕方
ランチ時間とは打って変わって、カフェテリア内は落ち着いた雰囲気だった。
窓から夕陽が入り込んで構内をオレンジ色に染めていた。
ジュディスはいつもの窓際のテーブル席で先に待っており、陽射しを遮る為にブラインドを下ろしておいた。
暫くするとウィリアムがやって来た。
「やぁ、待ったかい?ちょっと研究棟の方で書き物をしていたから..」
「いえ、大丈夫。それより突然、呼び出してごめんなさい」
「構わないよ、何か飲むかい?」
「ううん、私は要らない」
ウィリアムは彼女の答えを聞くと、自分も向かいの椅子に座った。
「そうだ、昨日はごめんなさい..タイミングが悪くて」
彼女はウィリアムにデイビッドと鉢合わせした事を謝った。
「いや、君が謝る事ないよ。それよりも何も忠告出来なかった自分が嫌になるよ..下手に刺激すると彼は後で何をするか分からないから」
「大丈夫よ、最近は落ち着いてるから。本当にありがとう..ウィリアム」
ジュディスは彼に優しく微笑んだ。
「ジュディ、この事を話したかったのかい?」
「あっ、それもだけど本題は...」
彼女は昼間カフェテリアでのカールがケイトに恋をしている事や彼と約束した事を話した。
「そうか、それで彼はあんなに人が変わったように..」
ウィリアムは腕組みをしながら頭の中を整理している様だった。
「私がケイト先生にカールの事をどう思っているのか聞く事になっちゃって..」
彼女は少し困った顔をしながらも笑顔を見せた。
「好きなら好きって言うべきだと思ったらつい熱くなっちゃって」
「ふふ..君らしいよ」
ウィリアムは小さく笑うと彼女を見つめた。
「私達の時の事覚えてる?」
「ああ、勿論。でも君は絶望の淵にいた..」
「それを救ってくれたのはウィリアム、貴方よ」
彼女は白い歯を見せ小さくはにかんだ。
二人の間で少しの間、時間が止まったようだった..それは心地良い幸福な時間。
「僕で手伝える事はあるかな?」
「大丈夫よ、ちょっと聞いて欲しかっただけ..それを口実にしたのもあるけど」
ジュディスは隣の椅子に置いていた鞄を取ると、立ち上がった。
「書き物の途中だったのにごめんなさい、それじゃあまた明日」
「ああ、気を付けて帰るんだよ。あっ、ジュディ」
彼女は足を止めて振り返った。
「今週は一緒に過ごそう」
ジュディスは笑顔で頷くとカフェテリアを後にした。
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