夏襲来!

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 春。心地良い日差しを浴びながら気分よく送るうららかな日々。  しかし、そんな平和なひとときも長く続くようなことはなく、気付けば辺りをジメジメとした湿気混じりの重い空気に支配されていた。  肌にまとわりつくような嫌な空気が徐々に濃くなっていくと、次第に空模様まで曇り始め、ぽつぽつと地面を濡らすようになる。  そんな空気の中心に位置するところで、二つの人影が対峙する。 「今年はまたずいぶんと目覚めが早いんじゃないのか……なあ、"ツユ"」  元々そこにいた片方が湿った空気を纏って近づいてきたもう1人に対して、嫌悪感を隠すことなく声を発した。  ツユと呼ばれた方は、むき出しの敵意に対して、呆れたようにため息を返す。 「…"ハル"は毎年毎年よくやるよね?いい加減、諦めたらどうなの?」 「お前らこそ毎年毎年よく来る気になるもんだ。誰もお前らのような過ごしにくい存在など待っていないというのになぜ気付かない」 「求められるかどうかの問題ではないと思うんだけど……まあいいや、面倒だしいつものようにこれから来る"ナツ"のためにもその場所ゆずってもらうよ」  気だるげにしながらも、ツユもハルの敵意に対して応じる構えをとる。
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