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「勝てない事は分かってる。それでも!少しでも長く快適に過ごしてもらう為に俺は運命にあらがう!!」
ハルは固めた拳を振り上げてツユへと殴りかかる。
ツユもその拳に応じようと手を上げようとした瞬間、横合いから別の手が、ツユに襲い来るハルの拳を掴んだ。
「ナツさん、今年はいささか早起きが過ぎるんじゃないですか?僕の出番がなくなるんですけど」
ツユは横から伸びてきた手の主へ視線を動かすと、その背後に曇っていた空が強すぎる日差しによって散らされていくのが見えた。
「すまんな、ツユ。聞き捨てならん言葉を耳にしてすっかり目が覚めてしまったのだ」
ナツはそれだけツユと言葉を交わすと、続けて敵意を全力で向けてくるハルの方へと向き直る。
「ハルよ。よもや貴様が、夏が誰からも求められていないなどと戯言に縋ってその場所に執着しているとは思わなんだぞ」
「戯言などと!年々増していくその暑さに一体どれほどの人間が困らされていると思っている!!」
「言葉では伝わらんのなら教えてやろうぞ!見ては混ざって、聞いては共に騒げ!肌で感じて全力で楽しめ!!」
叫ぶと同時、ナツの手がハルの手から離れると、ハルは後に飛んで一気に距離を取る。
しかし、それを気にするそぶりも見せず、ナツはハルと視線を合わせてニヤリと笑う。
「ハルよ。夏は…遊んで何ぼだろがい!!」
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