第1章 出逢い(1)

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*** 一ヶ月後。 別荘の使用人達が寝静まった深夜。 耐え切れなくなった私は唯一、一人になれるタイミングを見計らって脱走を試みた。 私の部屋は二階。 窓を開けてバルコニーの柵にカーテンを結び付けると、それを必死に掴んで下まで降りる。 結構な距離があるが、不思議とこの時は恐怖を感じなかった。 おそらく”この場から逃げたい”という気持ちの方が勝っていたのだろう。 何とか地面に足が着き、ホッと一息。 しかし、安心してはいられない。 警備の者に気付かれたら、すぐに連れ戻されてしまう。 逃げなきゃ……! 私は走った。 見慣れない場所、知らない土地。 何処に何があるのか。 どっちに行ったらいいのかも、分からない。 気持ちばかりが焦って今にも縺れてしまいそうな足で走る、暗い闇、辺りには深い森……。 小さな虫の鳴き声や、鳥の羽音さえも、聞こえてくる度にビクビクとしてしまう。 でもーー。 恐怖を抑え込んで、走っても、走っても、走っても……。 瞳に映るのは、見た事ない景色ばかり。 逃げられない。 行く所も、ない。 足を進める毎に湧き上がってくるのは、希望ではなく絶望という名の感情。 分かってた。 こんな事しても無駄だって、分かってた。
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