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もう、私が私に戻れる場所は何処にもない。
そう痛感した私が辿り着いたのは、砂浜。
いつも部屋の窓から見える、海だった。
「ッ……!」
立ち止まって、思わずペタンと力無く尻餅を着くと同時に、裸足で駆けてきたせいで傷だらけの足に痛みが走る。
私、何やってるんだろう?
私の住んでいた町は、海の向こう。
船もない、お金もない。
別荘から抜け出したところで、この広く大きな海を越える術なんて自分にはないのだ。
無力な自分。
現実に打ちのめされて私は苦笑いすると、海を見つめた。
昼間や夕方には陽に照らされてキラキラと輝く海も、夜は暗くて、静かで……。
深い深い闇のように映った。
そしてその闇は、私の心を侵食するーー。
このまま、吸い込まれたら……。
楽に、なれるかな?
逃げられないならいっそ、お母さんの所に逝けたら……。
一ヶ月間の孤独に追い詰められた私は、そんな馬鹿な考えを心に呼び起こしてしまった。
何かに導かれるように、立ち上がり……。
ゆっくりと、波打ち際に歩いて行き……。
そのまま、海の中へ足を進めて行くーー……。
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