第1章 出逢い(1)

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ーー筈、だった。 波打ち際に足を踏み入れようとした時。 微かに、私の耳に届いた、声。 「っ……う……ッ」 苦しそうな。 誰かの、うめき声? 「!……誰?」 その声にハッと我に返ると、辺りを見渡した。 波の音だけが静かに響く、夜の海。 暗闇に目を凝らしていると……。 少し離れた波打ち際に、うつ伏せに倒れている。 ……人影? 「!……大丈夫ですかっ?!」 私は慌てて倒れている人に駆け寄り、身を屈めて覗き込むようにしながら声をかけた。 一瞬白髪かとも思わせる、薄っすらと煌めいた白金色の髪をした、男性。 「っ……どうし、よう」 様子を伺うが、反応がなく意識を失っているようだった。 海で溺れたのかも知れない。 自分より重い男性をなんとか抱き起して仰向けにすると、口元や頬にそっと触れてみる。 呼吸をしていない、冷たい顔。 このまま放っておいたら、死んでしまうかも知れない! 男性を見ていたら、そう思って……。 亡くしたばかりの母の事が脳裏を過った。
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