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え?……え?
そんなものっ?!記憶喪失って、そんなに簡単にすませていいものなのっ……?!
今度はそんな彼の言葉に困惑してしまう。
……でも。
当の本人があまり気にしておらず、楽観的な考えなのならば、それでいいのかな?……と。
不思議と、次第に思ってしまうのだ。
何故なら彼の背中は、大きて暗い、夜の海の闇に呑まれる事もなく凛と輝いていて……。
私は思わずハッと息を飲んだ。
「悩んだり考えたりする事も大切だけど、それでも答えが出ないなら……。前に進むしかないでしょ?」
迷いも、揺らぎも感じさせない声でそう言って、頭の後ろで手を組みながら振り返った彼に見つめられたら……。
まるで魔法にかかったみたいに、もうその瞳を逸らせない。
「今しかない時間。
同じように過ぎてしまうなら、明るい未来を信じて、歩きたくない?」
優しい声で問い掛けて、目を細めてフッと私に微笑みかける彼。
鼓動が静かに、トクンッと跳ねた。
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