第1章 出逢い(2)

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お嬢様としか呼ばれなくて、自分を見失いかけていた私を、彼は真っ直ぐ見つめながら呼んでくれた。 「っ……もっと、呼んで。 名前、もっとっ……呼んで?」 泣きながら子供のようにせがむ私に、彼は優しく微笑んで頷くとゆっくりと口を開く。 「……アカリ」 「っ……もっと、……」 「アカリ……」 「もっと……っ」 ……。 大切にゆっくりと呼ばれる度に、優しい音が私に温もりをくれる。 変なの。指一本触れられていないのに、まるで心が抱き締められているように暖かい。 彼は嫌な顔一つせずに、暫く私の名前を呼び続けてくれた。 …… …………。
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