第1章 出逢い(2)

5/9
前へ
/378ページ
次へ
「っ……クシュンッ!」 「!……」 「……あ、ごめん。 さすがに少し寒くなってきた……」 感動の最中に訪れた終止符は、彼のくしゃみ。 手の甲で軽く押さえながら鼻をすするという、格好良いのに全く飾らないその姿に、さっきとはまた違った雰囲気で和みを感じて私は微笑った。 年齢は20代半ばくらいだろうか? 出逢ったばかりなのに、彼の傍はとても居心地がいい。 本当に不思議な人。 そんな事を思っていると、ゆっくりと立ち上がった彼がクルッと背を向ける。 「!……あ、っ……」 何処かに行っちゃう? 咄嗟にそう思って、寂しいような……。まるで母親に置き去りにされる子供のように、急にまた不安になって、私は思わず彼を追いかけようと立ち上がりかけた。 「あのさ。 ……悪いんだけど、向こう向いててくれる?」 「!……え?」 「濡れた服、絞りたいからさ……」 その言葉に、彼の服裾を掴んで止めようとした手が止まる。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加