第1章 出逢い(2)

8/9
前へ
/378ページ
次へ
おそるおそる、ギュッと閉じていた目を開けると……。瞳に映るのは、服を絞り終えて、屈んでいる彼の背中。 ……え? その行動の意味が分からず、目の前の広い背中をキョトンと見つめている私。 すると、顔だけ振り向いた彼が言った。 「ほら、乗って」 「!……え?」 「おんぶだよ、おんぶ。 足傷だらけで、痛いでしょ?」 「……あ」 言われて思い出した。 裸足で駆けてきて、傷だらけの足。 気付いて、くれてたんだ。 自分の事を見ていてくれた。 それだけでまた、涙が溢れそうになるくらいに嬉しい。 そんな私を促すように、彼が明るい声を弾ませて微笑む。 「……ほらっ、早く!」 「っ……。うんっ」 導かれるように、ゆっくり彼の肩に手を添えると、ピタッと背中に寄り添った。 湿った服越しなのに、温かい体温が伝わってくる。 「もっと、しっかり掴まって?」 彼の大きな手が肩に乗せていた私の手を包んで、自分の前に引き寄せると、離れないように掴まらせてくれた。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加