第1章 出逢い(2)

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ドキンッと胸が弾む、夢のような時間。 物心がつく前に父が他界していた私にとって、男性におんぶをされるのは初めての経験だった。 幼い日に憧れた、事。 「じゃあ、行くよ?」 遠慮がちに膝裏に手を回しながら、彼は私を背負って立ち上がった。 色んな意味で、ちょっとくすぐったくて……。 でも、久し振りに幸せを感じる。 ゆっくりと砂浜を踏みしめる彼の歩みのテンポが心地良くて、広く暖かい背中が今までにない安心感をくれて……。 彼の背中に頬を寄せたままそっと目を閉じた私は、ついウトウトと眠りの世界に誘われてしまいそうだった。 今夜は新月。 その私の心のように真っ暗な世界の中で、お月様を見付けた。 白金色に輝く彼は、まさに私を照らして導く月光となるーー。
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