第1章 出逢い(3)

2/6
前へ
/378ページ
次へ
「っ……いない」 そこはいつもと変わらない。 自分以外誰もいない、だだっ広い空間。 私は慌てて部屋を飛び出した。 昨夜の出来事が一気によみがえる。 彼に背負われて、門番の目を盗んで帰宅した時の事がーー。 部屋に付いているお風呂をすすめると、それよりも私の足の傷を心配して手当てしてくれた優しい彼。 お風呂に入った後も、ずっと枕元に居てくれて……。 私が眠るまで手を握っていてくれた、暖かい温もりをくれた彼。 夜の闇を優しく照らす月のような、白金色の彼。 不審者、って……もしかしてッ……。 悪い予感が頭を過る。 お願いっ……無事でいて!! 私は祈るような気持ちで廊下を駆けながら、警備や使用人が騒いでいる現場へと急いだ。 …… …………。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加