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私が泣きそうな顔をしていたからだと思う。
そこまで私には、恋と自分の名前に拒否反応があるのだ。
「でもね、恋華。1つだけきかせて」
美和が私の顔を覗き込んで言う。
「どうして、そんなに赤い顔をしてるの?」
そんなの決まってる。
「暑いから。熱中症一歩手前」
頬が熱いのも、知己さんを見たときの動悸も、知己さんの声が繰り返される幻聴も、全てそれのせいだ。
「…はははっ!」
一瞬の沈黙の後、美和は腹を抱えて笑い出した。
全く意味が分からない。
「もう、降参だわ。ただこれだけは覚えといて。」
ようやく笑うのをやめた美和が切り出した。
「あたしはいつも恋華の見方だけど、きっと恋が始まるのは誰にも決して止められないよ」
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