第2章 さなぎは美しく蝶と化す

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「んー、それじゃあ、とっちゃうよー」 「えっ?!」 私が驚く隙に、さっと腕を伸ばすあいねぇ。酔っているのに、そういった動きだけはやけに速い。抵抗する間もなく、あっという間に眼鏡を盗られてしまった。 「あっ、あいねぇ!」 私の少し怒った声に物怖じもせず、あいねぇは1人歓声をあげて言った。 「わぁー、やっぱりそっちの方がいいー」 酔っぱらいは、最強だ。空気を読まない。 そして、次の瞬間、信じられないことを言った。 「…眠いから、寝るねー」 そう言って、あいねぇは立ちあがり、自分の部屋の方へ歩き出した。私の眼鏡を持ったままである。しかも意外と速く歩く。 私は呆然とした。 「えっ、ちょっと待ってよ!」 私がそう言うのと、あいねぇの部屋のドアがしまる音はほぼ同時だった。
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