第2章 さなぎは美しく蝶と化す

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「入るよー」 声をかけてみるが、返事はない。ベットの上には大きく丸まったタオルケットがある。間違いなく、その中心にいるのがあいねぇだ。動いた音がしたから起きたと思ったが、ただの寝返りだったようだ。 「勝手に探すよー」 そう言いつつも、特に探す場所もない。あいねぇの部屋はとてもきれいで、余分なものが出しっぱなしになっていたりはしない。 念のために、机の下や棚と棚の隙間も見てみるが、やはり何一つ落ちていない。 「あいねぇ、私の眼鏡、どこ?」 声をかけてみるものの、全くの不反応。 何度も部屋の隅々まで探してみるが、やっぱり見つからない。 ふと顔をあげると、時計が目に入った。 7時50分。 もう家を出ないと間に合わない時刻である。 私は眼鏡をあきらめ、家を出た。
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