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「恋華、どうしたの…」
遅刻ギリギリなのに、美和は下駄箱に靴を入れる途中で完全にフリーズしてしまっている。
「美和?」
「昔の、恋華が、戻ってきた…」
ぽつりぽつりと文節ごとに言う美和。若干目が潤んできている。
「えっ?」
戸惑う私。確かにあのトラウマ事件の前の私は、髪はおろしたり、可愛い髪飾りや髪留めをつけたりしていた。眼鏡ではなく、裸眼だった。
だがそんな泣きそうになるようなことなのか。
お互いに何も言わずにただ立ち尽くす。
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンーカーンコン
美和と戸惑う私の間に、HR開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。
遅刻が決定となった瞬間だった。
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