第2章 さなぎは美しく蝶と化す

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「すみません、寝坊しました」 適当な言い訳をしながら、教室に入る。 クラスメイトの視線が一斉に私に集まる。 「あれ、ねぇ、あの子…」 「まじか」 教室が静かに騒めきだす。 最悪だ。私はいつもなるべく教室の隅にいたい人間である。だからこんなに注目されるのは苦手だ。 眼鏡は見つからないし、教室で目立ってしまう。今日は何てついていない日なんだろうか。 先生と一言二言かわしたあと、私は席に向かった。みんなの視線が背中についてくる。若干怖い。 席に座るとき、その中でもより強い視線を背後から感じた。視線をそっと後ろへ向ける。 あいつだ。 私に7年前トラウマを植えつけたあいつである。 あいつは開いた口がふさがらないと言わんばかりに、大きく口を開け、間抜け面でこちらを見てた。
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