第3章 恋と知りて踏み出す歩み

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「やだなあ、一応勉強教えられるくらいの頭はあるよ?」 知己さんは私たちの反応を見て苦笑いをしながら言った。隣で美和は失礼極まりなく、未だに疑わしそうな目つきで知己さんのことを眺めている。 「僕ね、一応深月と同じ大学なんですけれども…」 そう言いながら、知己さんはある有名私大の名前を挙げた。 「あっ、私の志望校だ…」 「えっ、れんちゃん、そうなんだ」 知己さんは驚いた顔で私を見た。そしていたずらっ子っぽい光を瞳に浮かべた。 「それじゃあ、未来の後輩に特別授業をしてあげるよ」 知己さんはそう言いながら、店の引き戸を開けた。 「お友達も一緒においでよ」 「えっ、でもお店の営業は…」 「大丈夫。どうせ今日もお客さん来ないから」 知己さんは軽やかに笑った。
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