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視察の準備
アルシュファイド王国には2人の王がいる。
双王と呼ばれるその1人は政王アークシエラ・ローグ・レグナ…アーク。
もう1人は祭王ルシェルト・クィン・レグナ…ルーク。
セレン・スタッポードは政王アークの従者だ。
そのため今日も王城の政王執務室で政務に勤しむアークの斜め後方で控え、時折意見を求められたり、隣室の彩石(さいしゃく)騎士たちを呼んだりしている。
彩石騎士とは、有事の際に双王の代行などを務める高位の騎士だ。
セレンは今は、来週、暁(ぎょう)の日から始まるアークの視察の旅の予定表に目を通しているところだ。
もちろんセレンも同行する。
ほかに同行する者は、彩石騎士の1人、緑鉉騎士ファイナ・ウォリス・ザカィア・リル・ウェズラと、政王機警隊の女騎士メニエキエラ・アンバーチェイン…キエラとキャレイン・ボルト、ダナ・ニグリィ、ワティナ・メラディス・トリィ、ガリィリディナ・グロー・ロウ…ガリィ、メレディ・ホップ、カイナール・フェデリオに、男騎士カグ・レナードとホルター・メッシェイドだ。
機警隊とは彩石騎士の代行など務めるアーク直属の部隊で、ほかに7人いるが、今回はこの顔触れだ。
アークとファイナとセレンは馬車に乗り、機警隊の者たちは馬に乗る。
ワティナとガリィとメレディとカイナールは夜番をするが、3時間交替で眠り、昼間も動けるようにする。
今日、荷物の最終確認を行うとかで、セレンは機警隊居室に顔を出しに行かなければならない。
セレンは自分用の予定表と経路地図をもらい、そのほかの書類を処理済みの箱のなかに置いた。
今日のアークは機嫌がいい。
この視察の旅を楽しみにしているようなのだ。
セレンも少し楽しみにしている。
セレンの出身はレグノリア区で、前職はレグノリア区街路警邏隊だったため、ほかの区には行ったことがないのだ。
だが今回は仕事なので、地図など見て事前の備えをしておかなければならない。
緊張が半分以上、楽しみが少しといったところだ。
「セレン、旅の準備は出来ている?」
アークに聞かれて、セレンは頷きながら言った。
「はい。ですがのちほど…15時の茶の時間を終えたら、機警隊のところに荷物の確認をしに行きますから、それによって自分の荷物を見直すかもしれません」
「ああ、そうだったわね。特に必要そうなものはあるかしら」
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