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それからすると、このアプリもカテゴリこそゲームではなかったが、きっと一風変わった(あるいはどこといって変わったところもない)ゲームなのだろう。
僕はそれほど期待もせずにエンターをタップする。
「この店は客に虫のフライを食わせるのか!」
突然響きわたった声は、アプリのものではない。
そもそも僕はスマホをサイレントモードにしてある。
声の主はカウンターにいた。
派手な柄のシャツを着崩した、いかにもな感じのチンピラ。
並ぶ他の客の迷惑も気にすることなく、いや、むしろ迷惑になることを誇っているかのような態度で、注文カウンターに肘をついて体を預けている。
隣の列に並んでいたおばさんは露骨に距離を空け、店内に入りかけていたスーツ姿のサラリーマンは回れ右をした。
唯一逃げられないのが、カウンターで相対している店員の女の子だ。
夏休みでアルバイトをしている高校生だろうか。
快活な雰囲気のショートカットに目元もきりりと綺麗な可愛い子だが、今は真っ白な顔を強張らせている。
かわいそうだけど、揉め事ならすぐに店長あたりが助けに入るだろう。
幾ら時間をつぶすためとはいえ、この後デートが控えている僕は、揉め事にかかわるつもりはなかった、のだが……。
アプリ画面の真ん中に大きく三角形の中に!マークが赤く点滅していた。
何かを警告しているようだ。
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