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「へえ、君、佐々木ちゃんっていうんだ。下の名前は?」
チンピラは今や、大声の恫喝から、ねちっこい視線と声に切り替えていた。
チンピラの周りに広々としたスペースを設けつつ、左右の列ではハンバーガー販売のやり取りが復旧していた。客も店員も見て見ぬふりだ。
スマホが不意に振動し、僕は反射的に画面に目を落とす。
〈悪者を駆除する方法を選択してください〉
1、剣
2、魔法
3、説得
そこには選択肢が表示されていたが、さすがにこの状況ではゲームに没頭できる気分でもない。
僕は適当に画面をタップし、再びカウンターに目を戻した。
カウンターの奥にある調理場のさらに奥に、ちらりと黒い服の袖が見えた。
他のスタッフの制服が紺であるのに対して、店長、もしくはマネージャーらしき人の服はたしか黒かったはずだ。
だとすれば、あれはアルバイトの女の子の危機を見捨てて、出てこないつもりなのだろうか。
もっといえば、隠れているのではないか。
「オレは佐々木ちゃんからポテトを買ったんだから、佐々木ちゃんには客に虫を食わせたセキニンがあるよね。
こういう場合サイバンになったら、佐々木ちゃんにはとても払いきれないぐらいのソンガイバイショウが発生するんだよ」
「すいません」
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