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周りが妙に静かにしているため、チンピラの気味の悪い猫なで声も、女の子の消え入りそうな声も、僕のところにまで聞こえてくるのだ。 このままだと、彼女がどんな酷い目にあわされるか分からないのに、誰か助ける人はいないのだろうか。 不意に僕の手元が明るくなった。 おどろいて下を見ると、スマホの画面がまばゆい光を放っている。 「わ、なんだコレ!」 思わず声が漏れた。 光は段々と強くなり、やがてスマホの性能的にとてもそんな光は出ないだろうというぐらいに輝く。 僕はスマホだけじゃなく自分の手元も直視できなくなって、目を細めた。 そ光の中から棒状のものが伸びあがってきた。 いや、シルエットでそれが西洋風の剣であることはすぐに分かった。 分かりはしたが、一体どういう理屈でスマホの画面から剣が出てくるのかが分からない。 立体映像だろうか、との考えがよぎった。 だが、先から末端までの全部が出てくると、剣はゴトンと大きな音を立ててテーブルの上に倒れた。 紙カップを倒して中身のコーラと溶けた氷をぶちまけてくれたことで、それが質量を持っていることは理解できた。 光と、僕のあげた声と、ぶちまけられたコーラと、そして何よりもその剣の存在そのものが、周りの人間の注目を集めた。 カウンターで店員の女の子に絡むチンピラよりも。     
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