南の魔王をぶっ飛ばせ!

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「どけよ、クソ兄貴。ジーンがあんなことをされて平気なのか?」 「じゃれ合ってるだけであろう。美しい兄妹愛だ」 これを兄妹愛と言うならば、美しいどころか屈折しすぎて殺伐とした兄妹愛だ。現に、ジーンは瀕死の状態へと追い込まれていた。 そんな状況を、メルが不思議そうに見つめている。 「ヘイヤ、あれは何をしておるのじゃ?」 「見ちゃダメ」 やはり、お子様には見せられない。ヘイヤは防御魔法を唱え、メルと一緒に遠くから傍観しようと決めた。 「クソ兄貴、覚悟はいいな? ぶっ飛ばす」 「やってみろ」 お互いに飛び掛かろうとしたその時、一触即発の状況を遮り、どこからか叫び声が上がる。 「静まりなしゃい!」 とうとう、最強の側近が現れてしまったらしい。凄まじい魔力を溢れさせながら迫る人物に対し、ハッタは顔面蒼白になって後ずさる。 「まったく、アレクお坊ちゃんも、キースお坊ちゃんも大人げない。客人が来ているのに兄弟喧嘩をするとは何事じゃ。のう、ハッタちゃん?」 側近はトネさんだった。確かに、色々な意味で最強と頷ける存在だ。 「トネ、止めるな。これは男と男の戦いだ」 「そうだ。我はキースを倒し、ジーンを手に入れる。邪魔をしないでくれ」 トネはジーンに目線を合わせ、驚いた表情を見せつつも微笑む。 「なるほど、坊ちゃんたちも大人になったと言うことじゃな。子ども扱いして悪かったのう。愛を語れる様になれば一人前じゃ。そうじゃろ、ハッタちゃん?」 「なんで俺に聞くんだ。こらっ、腕を組むなって。白うさぎはどうしたんだよ?」 「どこかへ消えてしもうた。でも、もういいんじゃ。あたしゃは今を大事に生きると決めたからのう」 トネの魔力が一気に膨れ上がった。危険を察知したハッタは逃げ出そうとするが、それよりも早く結界石をかざす。 「結界石、発動じゃ」 聖水を振り撒き、ハッタから購入した小ぶりの結界石を発動させた。まさに神業。ヘイヤの半分以下の時間で発動させ、小さな結界に包み込まれる。 「二人だけの空間……愛の巣の完成じゃ」 「助けてくれー!」 あっという間に、ハッタは捕えられてしまった。 d09b2b5e-fe82-4d6d-9b68-390269407d6c
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