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「幼い御息女を、我々のような旅の者に預けて宜しいのですか?」
「アリスは不思議の国の姫なのだろう? 歳もさほど離れておらぬようだし、同じ姫として学ぶことはたくさんあるはずだ。メルが望むなら、そのまま旅へ連れて行っても構わぬ」
大らかというか、心が広いと言うべきなのか、どちらにせよポセイドンの器の大きさが窺えた。しかし、アリスから学ぶのは少し怖い気がする。
「アリス様の目的は南の魔王を倒すことです。危険が伴いますが、それでも考えは変わりませんか?」
「問題無い。むしろ、それくらいの旅をした方が成長するというものだ。明日、報酬と支度金を纏めて渡す。頼むぞ」
「了解しました。お任せを」
その後は魔王を落ち着かせ、風呂を出て各部屋に別れた。
よほど疲れていたのか、みんな泥のように眠る。
そして、出発の朝を迎えた。
「メルを宜しく頼むぞ、アリス。甘やかす必要は無いからな」
「任せて」
「うむ。では、これを渡しておこう」
アリスは小さな箱を受け取り、ハッタが横から覗き込む。
「アリス、何を受け取ったんだ?」
「大したものじゃないわ」
箱の中身が召喚の鈴とは夢にも思わず、深く追求はしなかった。
「ふーん……あっ、そうだ。チェシャは深海の町に残って遊ぶらしいぞ。何か用があったら呼んでくれって言ってた。それから、レイラが地図をくれたぜ」
「分かったわ。地図はセバスに渡してちょうだい。さあ、行きましょう」
目指すは南国の町。ポセイドン一族しか使えない特別なルートへ入り、メルの指示で馬車を走らせる。
「次の分かれ道を左へ。その先を真っ直ぐいけば地上に出られるはずじゃ」
一気に深海から地上へ移動し、その後はレイラから貰った地図を頼りに進んで行った。
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