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「アリス様、見晴らしの良い草原に出ました。そろそろ休憩しましょうか?」
「そうね」
馬車を止め、温かな日差しを浴びながらティータイムを楽しむ。今までは焦っていた魔王も、一緒になって紅茶を口にした。
「ジーンのことは心配だが、焦っても良いことなど無い。心に余裕を持たせる為には、こんな時間も必要なのかもな」
すっかり、アリスのペースに馴染んでしまったようだ。
その横で、ヘイヤとメルはタマポックルと遊んでいる。
「タマちゃんというのか。可愛いのう」
「そうでしょ? プルプル震えるんだよ」
「ほう、見てみたいぞ。ほれ、震えるのじゃ」
「いじめちゃダメだよ」
平和だ。相変わらず、魔王をぶっ飛ばそうとしてるパーティーとは思えない。
暫くして、偵察に出ていたハッタが戻ってきた。
「セバスさん、この先に関所があるぜ」
「地図によれば、その関所を越えると南国の町です。アリス様、そろそろ参りましょう」
関所をシルバーカードで通り抜けると、遠目に大きな町が映し出される。普通に進むより何倍も早く、アリスは南国の町へ到着した。
「ここで船を見つけ、魔王の城がある南の離れ島まで行くのが早いようです。船の手配をするので、キタノ様も手伝って頂けますか?」
「我も? そうか、南の離れ島まで行く物好きを探すのが難しいと言いたいのだな? 分かった、手伝おう」
セバスと魔王は足早に去って行く。
「俺は道具屋を見て回るよ」
「私も行くわ」
「アリスが? 珍しいな」
「南国の雑貨を見たいの。行きましょ」
アリスとハッタも町の中心へ消え、ヘイヤとメルだけが取り残された。
「メルちゃん、どうする? ポセイドンさんの部下が経営してるって宿へ行く?」
「いや、アイドルの養成所を見たいぞ。ヘイヤ、ついて参れ」
当ても無く養成所を探す。すると、一際大きな建物が視界に入った。
「恐らく、ここじゃ。養成所は舞台も一緒にあるらしいからのう」
「じゃあ、入ってみましょ」
受付らしき場所には誰も見当たらない。その奥にある舞台では、アイドルを目指す少女たちの練習風景が見て取れる。
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