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「いらっしゃい……おお、メル様! 大きくなられて」
立派な髭を蓄えた男が笑顔で出迎える。そして、俯くメルの顔を覗き込んだ。
「どうされました?」
「わらわは……わらわは……」
アリスが背中にそっと触れ、メルは力強く顔を上げる。
「わらわは旅をする! アイドルになる為の経験を積みたいのじゃ。宮殿には帰らぬから、父上にそう伝えてくれ」
「よく言ったわ。これからは、私を姉だと思いなさい。行きましょ、町の外れに美味しいパン屋を見つけたの」
「うむ、お腹が空いては何もできぬからのう」
男の反応を待たず、アリスたちは宿を出て行ってしまった。残されたハッタは、バツが悪そうに口を開く。
「あいつ、無茶苦茶だけど一度言ったことは曲げないんだ。俺もメルが危険な目に遭わないよう見てるからさ、潔くあきらめた方がいいぜ。ポセイドンに報告しなけりゃならないし、あんたも大変だろうけど……って、何を笑ってるんだ?」
「ハッハッハ。ポセイドン様はこうなることを予測しておられました。ありのままを報告しておきましょう。きっと、喜ばれるはずです。それと、もう一つ。あの子は水龍であるポセイドン様と雷龍であるお妃さまの子供です。水と雷の底知れぬ力を秘めているので、案外助けられるのは、あなたたちかも知れませんよ」
「水龍と雷龍って凄いな。まあ、大丈夫ならいいや。後は宜しくな」
ハッタもアリスの後を追いかけ、宿を後にする。
こうして、アリスのパーティーに新しい仲間が加わった。
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