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その頃、南の魔王に連れ去られたジーンは……
「キースの城って、思っていたより普通だね。もっと、カジュアルなところを想像してたよ」
南の魔王に連れられ、城の中を歩き回っていた。
「俺だって、こんな古臭い城に住みたくないさ。でも、あいつが煩いんだよ」
「あいつ?」
「頼んでも無いのに、側近だと言い張って住み着いたんだ。まったく、兄貴のところへ行けばいいのに……おっと、何でもない」
言葉を濁し、ジーンを特別な部屋へ連れて行く。そこは衣裳部屋らしく、女性物の衣服がずらりと並んでいた。
「魔王様、お帰りなさいませ」
「ルシア、そこにいたか。ちょうど良かった、探す手間が省けたよ。こいつに似合う服を選んでくれ」
「かしこまりました」
ルシアと呼ばれた人型の魔物にジーンを預け、キースは部屋を出て行く。
「ちょっと、キース。置いて行かないで」
「落ち着いて下さい、お妃様」
「誰がお妃さまだよ。僕は……ねえ、何で笑っているの?」
「私にお任せ下さい。この中から、お妃さまに合う最高のお召し物を選んで差し上げます。
話を聞いてくれず、無理やり着替えさせられてしまった。
そして、三十分後。
ルシアがジーンを連れ、魔王の間に現れる。その姿は『ゴスロリ』だった。小悪魔ジーンの誕生だ。
「もう、何でこんな恥ずかしい格好をしないといけないんだよ。僕は男の子だよ? 似合うはず無いし、これじゃあ変態だよ」
いや、十分すぎるほど似合っている。天使のような外見と小悪魔な衣装のギャップが可愛さを引き立てていた。
ある意味、ジーンの為に作られた服だと言っても過言ではない。その証拠に、ジーンを見たキースは頭のネジがぶっ飛んだ。
「キース、どうしたの?」
「……」
「顔色が悪いよ。具合でも悪いの?」
「……」
「キース?」
……
……
「ウォォォォォ!」
突然叫び声を上げ、本能のままにジーンを抱きかかえる。
「うっ、うわっ! きっ、キース、どうしたの!?」
何も答えず、お姫様抱っこしたまま走り出す。
その先は、キースの寝室だった……
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