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アリスたちは南の魔王の城がある島へと降り立つ。魔王の顔色は悪いが、今回はどうにか船酔いに耐えたようだ。
船は次の目的地へ向かってしまった為、もう後戻りはできない。
「アリス、帰りはどうするんだ?」
「南の魔王をぶっ飛ばして、船を用意させればいいのよ」
「そっか。じゃあ、出発しよう」
二人はお気楽に話しているが、メルとヘイヤはお互いに震えながら抱き合っていた。
「ここは薄暗くて気味が悪いのう」
「変な声も聞こえるよね。魔物かな?」
そんな二人に、ハッタが冷めた目線を送る。
「おいおい、まだ魔物に襲われても無いんだぜ。メルは幼いし経験も少ないから分かるけど、ヘイヤはこれくらいの緊張感なんて何度も味わってるだろ」
「それでも、怖いものは怖いの。それに、見て。タマちゃんが震えてる……キタノさん、感じますか?」
「ああ、既に囲まれているな」
魔王が魔力の波動を解き放つと、多数の魔物が姿を現した。木の陰や草むら、海の中からも現れ、あっという間に囲まれてしまう。
ヘイヤはメルを連れて馬車へ避難し、残りのメンバーが迎撃態勢を取った。
「アリスが戦闘に参加するなんて珍しいな」
「勘違いしないで。この中に美味しそうな魔物がいないか見極めているのよ」
「……そんなことだろうと思ったよ。来るぜ」
魔物が一斉に襲い掛かってくる。セバスはアリスを守りながら魔物を撃破し、ハッタは鞭や爆弾を駆使して攻撃を防いだ。
その中で、とうとうこの男が活躍を見せる。
「面倒だな。我が雷の魔法で消し飛べ」
無数の雷が魔物に降り注ぎ、一気に敵の数を減らした。天然ギャグを頻発しすぎて忘れていたが、今の姿は北の魔物を統べる王としての貫禄が窺える。
「キタノ、やるじゃない。何か変なものでも拾って食べたの?」
「何故そうなる!?」
アリスには貫禄が伝わって無いらしい。
「アリス姫、冗談を言ってる場合では無いぞ。こやつら、無限に湧いてくるようだ。足止めして先を急ごう」
魔王は巨大な氷の壁を作り、魔物の侵攻を食い止めた。
「執事、馬車を出せ。前方の敵は魔法とアイテムで蹴散らす。小僧、行くぞ」
「任せな」
馬車へ飛び込み、前方の魔物を魔法とアイテムで蹴散らしながら突き進む。今回の旅で分かったことだが、魔王とハッタの相性は意外にも良さそうだ。
「どうやら落ち着いたようだな」
魔物の侵攻を振り切って走ると、大きな広場に出た。
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