南の魔王をぶっ飛ばせ!

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「建物が見えます。あれが魔物の回廊でしょうか?」 「そうだ。だが、やはり門番がいるな。避けては通れぬか」 薄暗くて影しか見えないが、巨大な門番だということは遠目でも見て取れる。 「グズグズしていても状況は変わらないわ。近づいてみましょう」 「待て、そやつは神獣なのだぞ」 アリスは馬車を飛び出し、無防備に門番へ近づいて行った。 慌てて追いかける魔王。しかし、心配をよそに神獣は眠っている。 「あら、この子……」 「おお、眠っておったか。助かったな。今の内に通り抜けようぞ」 「そんなことをする必要無いわ」 アリスは神獣の頭を勢いよく叩いてしまった。その衝撃で神獣が目を覚まし、魔王は声にならない叫びを上げる。 「久しぶりね、グリ」 「クエッ」 神獣は前回の旅で仲良くなったグリフォンのグリだった。ハッタとヘイヤも馬車を降りて駆けつけ、再会を喜ぶ。 「久しぶりだな、グリ」 「元気そうで良かった」 ハッタとヘイヤに頬ずりして甘える姿を、信じられないといった表情で見つめる魔王。その横で、メルは不思議そうに首を傾げていた。 「アリス、こやつは何者じゃ? ライオンさんか?」 「グリフォンのグリよ。そうだ、メルも来なさい」 アリスはメルを連れてグリの背中に乗る。 「おお、フワフワして気持ちいいのう」 「そうでしょ? これでメルもグリフォンナイトよ。キタノ、どうかしら? カッコいいでしょ?」 「えっ? あっ、ああ……カッコいいと……思うぞ……」 理解などできないが、アリスに逆らわないでおこうという気持ちは強くなった。その後ろで、セバスは一人冷静に状況を分析する。 「グリの後ろにあるのが回廊の入り口ですね。しかし、あの大きさでは馬車が通れません。アリス様、ここに馬車を残して進みましょう」 「分かったわ。グリ、馬車を頼めるかしら?」 「クエッ」 「良い子ね」 グリが馬車を見てくれるなら、どんな魔物も近づくことはできないだろう。道具を盗まれたり荒らされる心配は無くなり、ハッタは安堵のため息をつく。 「よし、行こうぜ」 気を引き締め、魔物の回廊へと足を踏み入れた。 「中は暗いな。発光石を使おう」 発光石で辺りを照らし、ハッタを先頭に進んで行く。
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