256人が本棚に入れています
本棚に追加
ジメジメした重苦しい空気は漂っているが、魔物の気配は感じなかった。そのまま道なりに歩くと、人工的な明りに照らされた空洞を見つける。
目に映し出されたのは驚きの光景。色とりどりの花々が咲き乱れ、その美しさに足を止め呆然と立ち尽くした。
「何だ、ここは? 俺たちは魔物の回廊に入ったんだよな。キタノ、どういうことだ?」
「分からぬ。以前通った時は、ただの空洞だったはず。気をつけろ、幻覚の一種かも知れぬぞ」
戸惑っていると、どこからか笑い声が聞こえてくる。
「フフフ……幻覚じゃ無いわ。キース様が好きにしろと言ってくれたから、私の能力に合わせた部屋へ模様替えしただけ」
アリスたちの前に、セクシーな人型の魔物が現れた。
「お主、気配を消していたな? ここで侵入者を排除しているという訳か」
「排除なんて、そんな野蛮なこと言わないわよ。私の名前はルカ。私とゲームをして、満足させてくれたら、この先にある扉の鍵を渡すわ」
「くだらぬ。我は遊んでいる暇など無い。扉など魔法で吹き飛ばしてくれよう」
「そんなことをしたら回廊ごと吹き飛んで、生き埋めになっちゃうわよ」
ルカは魔王の睨みを笑顔で逸らし、全員の顔を見渡す。そして、セバスの前に移動した。
「あなたは話が通じそうね。どう、私と遊んでみない?」
「詳細を伺いましょう」
「簡単よ。ここに咲く花から一つ選んで、私にプロポーズをして。キュンキュンして満足できたら鍵を渡してあげる。但し、キュンが足りなかったら罰ゲームを受けて貰うわ」
「なるほど、概ね理解しました。一つ、質問させて頂きます。先ほど、私の能力に合わせた部屋へ……とおっしゃっていましたね。その能力による罰ゲームですか?」
「鋭い質問ね。そうよ。でも、安心して。罰ゲームと言っても心に傷を負う程度だから」
とても安心できない。心に傷を負うくらいなら、普通にダメージを追った方がまだマシな気がする。
とは言え、ゲームをクリアしないと先へは進めそうにない。魔王が気だるそうに呟く。
「まったく……キースの配下は変なやつが多くて困る」
お前が言うな。
そんな魔王を横目に、アリスはわりとまじめに作戦会議を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!