南の魔王をぶっ飛ばせ!

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「予想以上にキュンとしたわ。最後に笑顔を見せられたら危なかったかも……でも、残念ね。プロポーズの花を受け取るには足りないの。代わりに、あなたにはこれを上げる」 逆に、ハッタがルカから花を受け取ってしまった。そして、瞳が色を失う。 「その花はアザミって言うの。花言葉は『触れないで』よ」 微動だにしない兄を心配して、ヘイヤが近づこうとする。すると、ハッタは拒絶反応を起こして飛び退いた。 「ヘイヤ、何をする気だ? 俺に触れるな」 「お兄ちゃん? アリスちゃん、お兄ちゃんが変だよ」 「ハッタ、落ち着きなさい」 「やめろ、アリス! 俺に近づかないでくれ。殴らないでくれよ」 ダンゴムシのように丸くなり、その場から動かなくなってしまった。 「フフフ。花言葉の意味を心に映し出す、それが私の能力よ。その子は今、触れられることに恐怖を感じているの。安心して、五分くらいで効果は切れるから」 恐ろしい能力だ。だが、ここまで教えてくれるのだから本当に遊んでいるだけなのだろう。 「厄介ね。セバス、攻略できそう?」 「もう少し情報があれば、攻略は可能と思われます」 「分かったわ。キタノ、出番よ」 出番が来てしまった。できるなら避けたい戦いだ。魔王は頭をフル回転させ、どうにか逃げようと試みる。 「我は小僧のように上手い芝居などできぬ。セリフも棒読みになってしまうぞ。やるだけ無駄だから、ここは執事が先に行くべきだろう」 「果たして、そうでしょうか? キタノ様ならできるはずですよ」 「どういう意味だ?」 「忘れてしまったのですか? では、こちらをお聞きください」 セバスは人魚から受け取った記憶の石を取り出し、出っ張りを強く押した。 『愛しのチェルシーよ、一人にさせてすまなかった。さあ、我の胸に飛び込んで来い』 そう、あの時のセリフだ。 初めて聞いたヘイヤとメルは顔を赤くし、魔王は青ざめる。 「どうでしょう? 宜しければ、もう一度……」 「わっ、分かった! だから、その記憶の石を我に渡せ」 「キタノ様がルカさまを攻略できたらお渡ししましょう」 完全に逃げ場を失ってしまった。
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